アウトパフォームとは?
アウトパフォーム(Outperform)とは、ある基準以上の値動きをすることです。株価や投資信託の基準価額について、1年間や3年間などの一定期間内に、株価指標などを上回る相対的な動きのことをいいます。
例えば、「この銘柄の今後1年間の値動きは、東証株価指数(TOPIX)を10%アウトパフォームすると思われる」、「この投資信託の過去3年間の騰落率は、ベンチマークであるS&P500を5%アウトパフォームした」といった使い方をします。
反対に、ベンチマークや参考指標に比べて相対的に低い値動きは「アンダーパフォーム(Underperform)」といい、同程度の値動きは「ニュートラル(Neutral)」といいます。
証券会社や投資情報会社は、上場株式に関するレポートをまとめ、投資家に向けて発信しています。そのレポートには「レーティング」や「株価格付」、「株式格付」などと呼ばれる株価の見通しが示されていることが一般的です。この見通しを一言で表すための一種の記号として「アウトパフォーム/ニュートラル/アンダーパフォーム」が用いられます。
レーティングや株価格付は、レポートを発信する会社によって独自に表現され、下記のような例が一般的です。
<各社のレーティング表現例>

※画像は筆者が作成
アウトパフォーム/アンダーパフォームを確認するには
投資の成果を評価するにあたって、多くの人は「自分の買い値に比べて儲かっているかどうか」と考えるでしょう。確かにそれも大切ですが、「置かれた投資環境の中で、どんな結果であったか」も重要です。
例えば、株式市場全体が20%値上がりした期間内に、自分の保有銘柄が10%上昇したとすれば、相対的に良い結果とは言えません。一方、自分の投資銘柄が5%下落したときに市場は10%値下がりしたならば、自分の運用は良かったと言えます。
投資環境は投資家自身が動かせるものではありません。投資の成果を評価する場合、市場全体や同じ業種内の平均騰落率と比べて自分の運用が良かったかどうかという見方も必要です。
個人投資家でも、取引証券会社のWEBサイトの「投資情報」などの画面にある「チャート」を使えば、保有銘柄や気になる銘柄の株価について、簡単に市場平均と比較することができます。ただし、この機能はPC閲覧用サイトのみで、スマホ用サイトでは見られない場合もあります。
三菱UFJ eスマート証券のPC用WEBサイトの場合、「個別銘柄情報」のトップページから「チャート」のタブを選択すると、下の図の画面になります。表示されたチャートの下にある「比較ラインチャート」で、比較したい株価指標などを選択します。その後チャートの上にある期間や足の種類(1分足~月足)を選ぶと、比較チャートができ上がります。
<アウトパフォーム/アンダーパフォームの確認方法>

(出所:三菱UFJ e スマート証券)
このように、ご自身の運用成果を評価する際には、市場や業種の平均騰落率と比較するのも一つの方法です。
余談ですが、この「比較チャート」を作成する画面では、他の個別銘柄との間でも株価推移を比較できます。株価指標を選択したプルダウンボックスを「銘柄」のままにしておき、隣のボックスに銘柄コードを入力すると作成できます。
投資信託の運用レポートでも「アウトパフォーム」をチェック
「アウトパフォーム」という言葉は、先にご紹介した株価の見通しのほか、投資信託の運用報告書や月次レポートなどにも登場します。
投資信託は、決算の都度、運用報告書を作成し、どのような運用だったのかを投資家に開示しなければなりません。また任意ですが、ほとんどの投資信託が、一般に「月次レポート」と呼ばれる簡単な運用状況を投資家向けに作成しています。
これらの開示資料には、通常、運用担当者(ファンドマネージャー)による運用状況のコメントが掲載されています。その中で、「当ファンドの基準価額は、ベンチマーク(注)をアウトパフォームしました」といった表現がなされる場合があります。これは、「この投資信託は、この期間、市場全体より高い運用ができた」という意味です。
また、運用会社にもよりますが、投資信託の月次レポートには「騰落率」という、期間ごとの基準価額の変動を示した表が掲載されています。運用目標にベンチマークを定めている投資信託は、ベンチマークの騰落率も併記され、運用結果が比較できるようになっています。
<投資信託の月次レポート内の「騰落率」の表の例>

※画像は筆者が作成
投資信託は、ベンチマークや参考指標と比べて相対的に良かったか悪かったかという見方で評価することが一般的です。ベンチマークを設定していない投資信託もありますが、その場合でも参考指標を挙げて比較していることがあります。
上の図の例では、この投資信託の直近1ヵ月は基準価額が-0.7%でしたが、ベンチマークの-0.9%より下げは小さくすみました。運用はマイナスでも、この状態は「アウトパフォーム」と言えます。過去3ヵ月のスパンではベンチマークをアンダーパフォームしていますが、中期的にはニュートラルで推移し、設定来の全期間においてはアウトパフォームしています。
投資信託は「ほったらかし投資」も推奨されますが、この程度でもよいので、放っておかずに時には運用状況を見ることをお勧めします。資金を積み立てると同時に、投資経験や知識も積み立て、資産形成のスキルを身につけましょう。
ここで、ベンチマークについても簡単にご紹介しておきます。日本株全体に投資する投資信託のベンチマークには、「東証株価指数(TOPIX)」や「JPX日経インデックス400」がよく使われています。米国株の投資信託では「S&P500(S&P500種株価指数)」が、世界株の投資信託では「MSCI ACWI(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)」や「FTSE(FTSE Global All Cap Index)」が多く使われています。
また、債券の投資信託でも、「NOMURA-BPI総合指数」など債券投資のベンチマークが運用目標として採用されています。
アウトパフォームにこだわり過ぎるのは要注意
このように、個別株投資であれ、投資信託であれ、運用の基準を定めることで、相対的な評価をしやすくなります。
ただし、注意点もあります。
「アウトパフォームした」と言っても、それはあくまでもベンチマークに対して優位であったというだけです。「他の市場に投資をしていれば、もっと効率良く利益を上げることができた」ということがあるかもしれません。長らく低迷している市場に投資をしていて、そのベンチマークと比較してアウトパフォームしたと喜んでいるとしたら、「井の中の蛙」です。
投資をするにあたっては、さまざまな判断基準を持つことが大切です。
また、「アウトパフォーム/アンダーパフォーム」は、値動きに対する評価です。値動きに執着するあまりマネーゲームのような投資を繰り返してしまうと、健全な資産形成ができなくなってしまう恐れもあります。さらに、投資の醍醐味は自分のフトコロを肥やすだけではなく、投資対象として魅力のあるところに資金を届けるという側面もあります。
心豊かな投資ライフができるよう、投資判断の一つとして「アウトパフォーム/アンダーパフォーム」といったレーティング情報を上手に活用してください。