トランプ関税など外部環境が不透明な中、「マリコン」企業が内需関連として注目されそうです。
マリコンとは「マリン・コントラクター」の略称で、海洋土木工事や港湾施設の建築工事に特化した建設会社のことです。
海洋土木工事を行うには専門性や高度な技術、実績があることが必要で、建設業の中でも一部の専門企業のシェアが高い点が特徴です。
マリコンは災害に備えた護岸や防波堤の設置のほか、インバウンドで需要が増加するクルーズ船向け港整備、防衛の要となる基地や、政府が重点を置く洋上風力発電などでビジネスチャンスが拡大しています。
マリコン株は、かつてはその仕事の内容から「浚渫(しゅんせつ)」株と呼ばれていました。
浚渫とは港湾や河川などの底面を浚(さら)って土砂などをすくい取る工事のことで、専用の浚渫船を使うことが一般的です。
海底の土砂をすくって深くし、水深を維持します。
水深が足りないと船が海底に接触するリスクなどが生じます。
港湾の整備や、災害対策、海洋での工事などでは、浚渫が欠かせません。
国土交通省は2025年3月に、「クルーズ旅客の受入機能高度化に関するガイドライン」をまとめています。
これによると、世界的なクルーズ市場の拡大が予測される中で受け入れ能力の強化が急務であり、また、クルーズ船の大型化に伴って、既存の受入環境がその規模に対応しきれていないなどの課題をあげているのです。
日本の企業が運航するクルーズ船は「飛鳥Ⅱ」が総トン数5万トン級で、乗客872人が最大ですが、海外では総トン数22万トン級で、乗客5,000人クラスが少なくありません。
地方ではクルーズ船の寄港ができないところもあるため、大型クルーズ船の着岸を可能にするには、浚渫など海上土木工事が不可欠となります。
政府は防衛費を従来GDP(国内総生産)1%だったものを2027年度までに2%に増加させていく方針です。
ミサイルなど直接的な軍備への関心が高いですが、自衛隊基地の拡充なども着実に進んでいます。
一例をあげると鹿児島県西之表市の馬毛島での新設工事です。
国土交通省の九州整備局が、係留施設や滑走路などの工事を2023年に発注しています。
馬毛島は種子島の約10キロメートル西に位置する面積8キロ平方メートルの無人島ですが、防衛省は南西諸島の防衛力を高めるための重要拠点とされています。
ここでは、マリコン大手の五洋建設、若築建設、東洋建設、東亜建設工業は、係留施設や仮設桟橋などの工事をそれぞれ受注しています。
このほか、青森県むつ市の大湊基地、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた地盤改良工事でもマリコンが参画しています。
洋上風力発電では、一つの風車が大型であることなどで設備の設置や維持管理を行うために、一定の耐荷重や広さを備えた埠頭が必要になります。
政府はこうした施設を「海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)として指定し、発電事業者に長期間貸し付ける制度を作っています。
また、風車を立てる際にもマリコンの技術が必要になります。
関連銘柄をピックアップします。
マリコン最大手。
ゼネコンとしても準大手級。
国内空港などの臨海部大型プロジェクトに強みがある。
風力発電分野では作業船として使われるSEP船(自動昇降式作業台船)を2隻保有。
これは、海上作業用の台船を海面上から上昇させて、クレーン、くい打ちなどの作業を行う船のこと。
風車の組立てや修繕などで活躍する。
2027年には3隻目を稼働予定。

三菱UFJ eスマート証券のチャートツールEVERチャートで作成
週足表示、2025年4月21日まで
EVERチャートを開く
マリコン大手の一角。
洋上風力発電では着床式の基礎工事に加え、浮体式洋上風力発電向けにも展開。
NEDOの助成を受け、TLP(緊張係留)方式で、大水深施工実験を北海道石狩湾沖合で実施した。
TLP方式は、海底基礎との緊張係留により、浮体を係留する方式。
今後の主流となる15メガワットクラスの大型ウインドタービンをコンパクトな浮体に搭載できるとしている。

三菱UFJ eスマート証券のチャートツールEVERチャートで作成
週足表示、2025年4月21日まで
EVERチャートを開く
港湾土木に強みがある中堅のマリコン。
大林組と共同で建造を行っていたSEP船が2023年4月に完成。
風車の基礎から風車組み立てまで対応可能な1,250トン吊りのジブ(荷物を吊り上げて移動させる方式の)クレーンを装備。
大型化する洋上風力発電設備の建設に対応する。

三菱UFJ eスマート証券のチャートツールEVERチャートで作成
週足表示、2025年4月21日まで
EVERチャートを開く
海洋土木に強い中堅ゼネコン。
埋立・浚渫から海洋土木全般にまで展開している。
幅広い浚渫技術を有するほか、浚渫を行う際に発生する土の処理技術などにも強みがある。
マリコン上位3社とともに、2025年月に国交省の認可を受けて発足した「浮体式洋上風力建設システム技術研究組合」(FLOWCON・ファルコン)に参画した。

三菱UFJ eスマート証券のチャートツールEVERチャートで作成
週足表示、2025年4月21日まで
EVERチャートを開く
独自工法に強み。
地盤改良工事首位の不動建設と、海洋土木や消波ブロック大手のテトラが2006年合併して発足。
護岸関連の地盤改良工事に注力している。
消波ブロックは港湾整備に欠かせない。
浸食が激しい海岸線や港湾の防波堤などを波の力から防護する技術に強みがある。

三菱UFJ eスマート証券のチャートツールEVERチャートで作成
週足表示、2025年4月21日まで
EVERチャートを開く